PHANTOM for T
「……あー」
ゴロリ、とベッドに転がりながら両手両足を伸ばす。
緩く大きく寄る皺の間を縫ってシーツの波を泳ぎながら、あくびをひとつ。
数時間前に食べた朝食はすっかり身体に吸収されて、生ぬるい気だるさが身を包み始めた頃合。
…さて、どうしたものか。
影が差し、薄暗くなった天井を見つめながら考えるフリをしてみる、が…。
「暇だー」
俺がこの黒の館で目覚めて三日が経とうとしている。
時計のない室内。
当初は俺の感覚を狂わせていくんじゃないかと不安がよぎりもしたけれど、実際過ごしてみてそれが杞憂だということは身をもって思い知った。
それというのも、食事の時間を指定されたはいいものの時計がないのにどうやって、と首を傾げていた俺の疑問とともに解決されてしまったからだ。
のんびりゴロゴロと過ごしていても、その時がくれば飛び起きざるをえない。
なぜならば。
「部屋、変えてもらおうかなぁ」
チラリと視線を窓の外へと投げれば、窓枠の端に寄り添うように、すこーしだけ覗き見える塔がある。
まるで、図ったかのように真横。
地震が起きて倒れてきたなら真っ先に潰されて死ぬのは俺だと思える近距離。
いや、そんな可能性の薄い事象は横に置いといて。
……問題はその突端だ。
ツンととんがった黒い屋根の下、柱しかない吹き抜けのような状態のそこには随分くすんだ輝きが吊り下がっている。
それも、ひとつじゃない。
ここから見るだけで4つは確実に連なっている。
あれが、だ。
朝、昼、夜。
俺に食事の時間を知らせるためが如く、鳴り響くのだ。
もう一度繰り返しておくと…近距離で。
図ったかのように、真横で、だ。
そのたびにうつらうつらと舟を漕いでいても飛び起きざるをえないし、起きていても心臓が止まりそうなくらいびっくりするし、窓ガラスはビリビリするし、床も軽く振動するし!
「日毎に寿命が縮まってる。絶対」
思い出しただけで強まる心臓を抑え込むように、左胸辺りの服を握ればベッドに溶け込む白にも皺が寄った。
何故か揃えられていた俺サイズの服。
ラインナップはどこか古めかしく、スーツや燕尾、物語の中の貴族様が身に付けるような豪奢な上着など普段から着込むにはいささか勇気のいる品ばかりだった。
おかげで、今の俺は白のワイシャツに比較的動きやすい紺地のボトムだ。
下手をすればどこぞの学生のようである。
「………はぁ」
と、状況をさらって思考を回すものの……俺の暇人加減が薄まることなどなくて。
することなど何もないのだ。
俺が必要とされる場面に出くわすことがない。
食事はいつも、俺が食堂に足を踏み入れた時点で全て用意が整っている。
庭の手入れなんかはほぼ完璧に出来ていて、時折スクアーロが草を抜いているのを見かけたりするだけだ。
館の主人なはずなのに雑草抜きをしているのはなんだかおかしいけれど、本人が自主的に行っているなら止める必要もないだろうし。
掃除?
いや、それも俺が手を出す必要性など微塵も感じない様相なのだ。
何より、掃除なんて生まれてこのかたしたことないから、ヘマをやらかすに決まっている。
しかも不思議なことに、いるはずの使用人さんたちと誰一人出くわさないのだ。
お目にかかったことがない。
気配もない。
だから、手伝いをかって出ることもできないわけだ。
さて、どうしたものか。
俺の存在価値は、この館にも、ない。
なのに、どうしてスクアーロは……怪人は俺を攫ったのだろう。
食らうわけでもなく、殺すわけでもなく。
「どういうつもりなんだろう……スクアーロ」
「呼んだかぁ?」
「ほあ!?」
「……お前、毎度奇声を発しないと気がすまねえみたいだなぁ」
ごろり、と寝返りをうって窓に背を向けた瞬間、突然背後から声が降ってきたら、誰だって驚くに決まってるじゃん!
ビク!と跳ねた肩ごしに振り返れば、案の定というかなんというか。
はあ、と長い長い溜息を吐き出しながら腕を組むスクアーロが立ち尽くしていた。
そう。
スクアーロは、俺が呼べばすぐさま現れるのだ。
どういう仕組みかはわからないけれど、俺に気配をまったく悟らせず、決まって背後に立つ。
どこにいても。
庭にいても、食堂にいても、応接間にいても、玄関ホールにいても。
俺が彼の名を口にするだけで、彼はすぐさま参上する。
怪人故?と首を捻りつつ、部屋中、館中を探ってみたけれど…トリックらしいトリックも見つけられないまま。
理由を聞いても「お前が呼ぶから」とはぐらかされるし。
とにかく、なんだ。
心臓に悪い環境には違いない。
「スクアーロさぁ」
「ん?」
かといっていちいち驚いていたんじゃ、心臓がいくつあっても、寿命が何年あっても足りやしない。
三日で俺も学習した。
ツッコミを入れてたらキリがないと。
なんで?なんで?と尋ねたところで流されるんだから、そこにひっかかるくらいなら他のことを尋ねた方がよっぽど生産的なのだ。
「なんで俺をここに連れてきたの?」
故に、直球。
どストレートの球を投げ込んでみる。
ベッドから背を上げて座りこみながら、一瞬だけ目を丸くしたスクアーロを見上げて言葉を待つ。
「前、にも言っただろぉ!ただの暇つぶしだぁ!」
あ。今ちょっとつまった。
「それにしたって、スクアーロが俺で暇をつぶすことなんてないじゃん。俺がスクアーロを呼ぶことがあっても、スクアーロが俺を呼ぶことなんてまったくないし」
三日。
ここにいる間で、一度も。
俺がスクアーロを呼んで心臓をバクバクさせることはあっても、スクアーロが俺を呼びつけることは一度もないのだ。
暇つぶしのため、というなら俺に何かをさせるとか、自分の相手をさせるとか……色々あるはずなのに。
スクアーロが自ら、この部屋に尋ねてくることすらない。
俺が、名を呼ばない限り。
「ねえ、どういうつもり?」
「お前は、他に行く所も、ないんだろぉ。だったらここにいりゃあいいじゃねえか。問題も何もない」
ほら。
全然論旨が違う。
こうやってすぐ脱線させて、はぐらかそうとするんだ。
だけど、今日の俺は超鈍感でいくから。
はぐらかされてはやらない。
空気は、あえて読まない。
「それじゃわかんないってばスクアーロ。俺の存在価値、ないじゃん。誰にも会わないし会えないし。スクアーロだけが言葉を交わせるのに、スクアーロの方から俺に構ってくれることなんて、ないし」
正直参り始めている。
必要ないと言われているようで。
いてもいなくても同じ、空気になってしまうかのようで。
ちょっと怖くて、大分寂しい。
「ボードゲームはあるけど相手がいない。カードもあるけど相手がいない。食事は一緒なのに……席が離れ過ぎててわからない。味が、しない」
上座に向かい合う位置、丁度スクアーロと対面する形で毎度俺の席は用意されている。
けれど、テーブルは十六人掛けくらいの大きなものだから距離が果てしなく遠いのだ。
今とさほど変わらないはずの軟禁状態ではあったが、自宅では多くの人に囲まれていた。
触れ合うことが出来た。
だから……現状はとてつもない孤独感に晒されているようで。
心臓が、肺が、腸が、キュンキュン痛む。
「スクアーロが俺をどうしたいのかは、わからないけど……俺の話し相手になってくれるのは、スクアーロだけなんだから……だから」
思わずぎゅっと掴んだシーツはスベスベで、俺の居ぬ間にベッドメイクをしてくれた人に申し訳ない気がした。
でも、一分、一秒が過ぎ去る毎に、俺の指先の力は増していくばかり。
「俺に、もっと構ってよ!」
怪人相手。
有無を言わさず俺を攫った相手に対して言うべきセリフではないのかもしれないけれど、あふれ出る気持ちを抑えるつもりは俺にはなかった。
素直であれ、と育てられたが故。
箱庭のような優しい牢獄で生きてきたおかげで、俺の感性や感覚は常人離れしているのかもしれない。
町に下りたこともあるし、友達――獄寺くんや山本たちに接してきたから、自分がどこかずれていることも自覚がある。
でも、撤回はしない。
絶対しない。
俺を連れてきたのはスクアーロだ。
だから、スクアーロには俺の相手をする義務があるじゃないか。
「……お前って奴は……」
びっくりしたように目を真ん丸くして俺の話を聞いていたスクアーロは、すっと目を細めたかと思うと組んでいた腕を解きながら、ベッドの端へと腰掛けた。
サラリと肩から流れ落ちた銀糸に意識が奪われる。
「わざと、遠ざけてたっつうのによぉ」
「なんで遠ざけんのさ!意味わかんない!」
「自分で言うのもなんだが、俺は怪人なんだぜぇ?」
「聴いたよ!知ってるよ!」
いや、知ってはいなかったけど。
だからなんだっていうんだ。
俺を放置した理由には足りないじゃないか。
「絶対、後悔するぜぇ?」
「後悔は後でするから後悔なの!するかどうかもわからない先のことなんて、わからないから考えたって無駄なの!」
自分で言っててこんがらがってきたんだけど、間違ったことは言ってない。
言ってない……はずだ。
「俺は今、ここで何をしたらいいのか全然わからない。簡単に言うと暇!だから、スクアーロは俺の相手をするべき!俺がここにいていい理由をくれるべき!おーけー!?」
勝手なことを、ここまで臆さず言えるのは多分、三日間で積もりに積もったストレスが俺の口を滑らせるせい。
それもこれも、全部スクアーロのせい。
うん、だから、きっと俺は悪くないんだ。
だから……お願いだから、否定しないで。
そっと頷いてよスクアーロ。
「――わかった」
俺の声なき懇願が届いたのか、スクアーロはフと息を吐いたかと思うと、緩慢に頷いてみせた。
パチリとひとつ瞬きを挟み、俺に注がれる視線。
……なんだろう。
とても、とても…急速に肺の辺りがざわめく。
「お前がそう言うならば、俺の望むがままに、俺の相手をしてもらうぜぇ?」
ぶつかってくる直線的な視線とは裏腹に、含みを持たせた微笑が口元だけに貼り付けられていて。
「む?」
突如顎の先を、スクアーロの右手が掴んできたのに抵抗も出来ないまま。
「その代わり、俺だけを、見てろよぉ…?」
やけに熱い吐息が唇を掠めたと思った次の瞬間には、それ以上の熱と弾力がぶつけられていたのだった。
「ほあああああ!」
「うぐっ!」
反射的に突き出した俺の足の裏は、見事スクアーロの鳩尾へと吸い込まれた。
後ろに仰け反りながらもフラフラと上体を保つなんて……さすが怪人。
だなんて!感心してる場合じゃない!
「な、何しやがるんだぁ……!」
「それはこっちのセリフだー!!」
一瞬、一瞬?いや、一瞬なんかじゃない。
何が起こったのか俺が把握するまでの五秒間くらい、押し当てられていたはずだから。
なんてこった。
なんてこった!!
「キ、キキキキキスとか…!」
なんでしたんだよ!って訊く前に声が喉で詰まってしまう。
生々しい弾力が、いまだに貼り付いているのだ。
指先で何度も擦って消そうと試みるが、感触も、温度も、弾力も……むしろ増していくようにさえ思える。
ありえない。酷い。
だって、だってだって。
「はじめて、だったのに……!」
挨拶の『ほっぺにキス』は幾度となく交わしてきたけれど、唇だけは己が決めた最愛の人に捧げなさいと母さんに言われてきたから。
とっておいたのに。
守っていたのに!
会って数日しか経っていない他人、それも男によっていとも簡単に奪われてしまうだなんて!
悲しい、とか悔しい、とかじゃない。
……胸が痛むほど、情けないのだ。
「ムードもロマンもないじゃんかぁ……!」
「お前、問題はそこなのかぁ?」
夢見ていたのだ。
いつか、心の底から愛した人と、願わくば可愛らしいふわふわの女の子と、一日楽しく過ごした後、別れ際、互いに愛を告げあって、それで……それで……!
それなのに!!
「俺、全然考えてなかったのに!そんな雰囲気なかった!」
「それはお前が感じてなかっただけだろぉ」
「俺の理想!俺の夢がー!返せー!スクアーロの馬鹿野郎ー!」
「う゛お゛ぉい!何泣いてんだぁ!」
「誰が泣くかぁ!」
ベッドの上で尻餅をついたような格好のスクアーロへキッと視線を突きつければ、気圧されたのかスクアーロは唇を引き結んで息を飲んだ。
眉間の皺が小さくなって……微かながらもバツの悪そうな空気を醸す。
微か、だけど。
「…………」
「う゛………」
誰が泣くかと言いつつ、頬の丘を登り、なぞるように滑り落ちていく生暖かい感触の自覚はある。
次々に落ちていく雫を、止める気はなかった。
無言の号泣の力は家人の全てを平伏させるほどの威力があるということを、俺は自宅ですでに実証している。
ここぞという時の武器。
本当に本当に涙が流れて、いたたまれない時だけに発動する最高の技。
「……わ、わる、かった」
それは彼にも有効らしく、敗北を受け入れるが如くがっくりと首を落としながらの謝罪をもぎ取ることに成功した。
さら、と流れ落ちた銀の髪がカーテンとなってスクアーロの表情全てを覆い隠してしまったことは残念極まりなかったけれど。
「唇はやめて。唇は」
「唇じゃなかったらいいのかぁ」
「挨拶なら……慣れてる、から」
ここね!と指で指し示した頬をちらっと見上げたスクアーロは「そっちの方がよっぽど恥ずかしいだろぉ」と小さく呟く。
何言ってんのさ。西洋人なのに。
「……謝っただろぉ」
「うん。謝ったね」
「だったら……」
「何」
「いい加減、泣き止めよ」
そんなこと言われたって。
武器とか技とか言ったけど、その実、狙って出来る芸当ではないのだ。
自然と溢れて溜まって、流れる。
それを有効活用しただけだもん。
涙自体の生成を、意志で止めることは俺には不可能だった。
泣きたくて泣いてるんじゃないから。
気持ちはどことなくざわついているけれど、精神は落ち着いているのに。
鼻をすするでも、嗚咽を繰り返すでもなく、ただただボロボロと出てくる涙。
昔から時折起きた現象だけど、何故だか今回はやけに長い。
……情緒不安定なのかな、俺。
「何か、面白いことでもしてよ」
「は!?」
「気が紛れれば、止まるかも」
「………」
気持ちを完全に切り替えることが出来ないからこんなことになってるんじゃないかと思うわけだ。
だって、どんなに気を落ち着けようとしたって唇に纏わりついた感触は一向に消えてなくならないし、指先に宿る小さな振動はまるで甘い痺れ。
そしてどう足掻いても、スクアーロが俺のファーストキスの相手に変わりはなく、て…。
なんて考えると余計に涙が勢いを増す。
嫌悪……っていうよりは……驚愕?
びっくりしすぎちゃって止められない?みたいな?
乙女か俺は。
「……一人で暇、なんだよなぁ?」
「え?あ、ああうん。そうだよ」
「俺も相手してやるが、いつでもベッタリいられるわけじゃねえ」
「あーそりゃあそうだろうけど」
俺だって、四六時中スクアーロと対面し続けるのはさすがにごめんだ。
インターバルは必要だし、傍にいすぎるのも居心地が悪い。
「だから……気は乗らねえが、こいつらにお前の相手をさせる」
パチン、と。
スクアーロの指が小気味良い音色を響かせる。
手袋してるのにどういう仕組みなの!?と目を見開いた――その時だった。
「みゃあーお」
「なーん」
顔面めがけて、真正面から。
黒い毛の塊が飛びかかってきた。
「ほぎゃ!ふも!な、なにご、と!?」
「う゛お゛ぉい!馬鹿猫がぁ!やめやがれぇ!」
髪の毛を掻き分けて、しがみつく黒の塊は、口を開く度に口内へと長い毛が入り込む熱を持った物体で…。
なーん、なーんとしきりに鳴く声から察するに……。
「猫?」
「う゛お゛ぉい!窓から捨てるぞ馬鹿猫!」
ベリ、と派手な音でも聞こえてきそうなほど四肢をめいっぱい広げた状態でスクアーロに引き剥がされた黒……黒猫は、宙にぶらさげられながらもじたばたともがいている。
爪を引き出し、尻尾をばたつかせる様はどこか滑稽だ。
「この、頭の悪い黒がハルで、そっちのいくらかマシな白いのがキョーコだ。煮るなり焼くなり蒸すなり、好きにしろ」
なんで調理法を列挙するんだ。
「わっ白猫もいたんだ」
「みゃあ」
ベッドの端にちょこんと鎮座した白猫は一瞬置物のようにさえ見えたけれど、俺が瞬きをする間に、応えるように鳴いてみせた。
黒猫…ハルはふわふわと長い毛足を揺らしながら、スクアーロに放り投げられるままベッドへと着地する。
随分おてんばなようだ。
が、やはり、猫は猫。
四つの足で何事もなく降り立ちながら、スクアーロにそっぽを向いた。
……なんか面白い。
「ハル、とキョーコ?キョーコは行儀いいなぁ。ハルは、頼むからもう飛び掛ってこないでよ」
ね?と首を傾げて二匹を交互に見やれば、丁寧な足取りで俺の傍へと歩み寄ってきた。
左右から挟み込むよう、二匹同時に頭をこすり付けてくる様は…やっぱり愛らしい。
長毛のハルに対して、キョーコは短毛。
二匹とも丁寧なブラッシングが施されているのか、頭へと差し出した掌に触れる毛並みは極上のシルクを連想させた。
と。
なんだかチクチクするような視線を感じる、と顔を上げてみれば…。
「………」
「どうしたの、スクアーロ」
唇を開き、両口端を下げ、片眉を器用にしかめながら半眼。
嫌なものを見るような目つきのスクアーロは今にも「げぇ」と声に出しそうな様相で腕を組んでいる。
「拾い食いでもした?」
「誰がするかぁ!……まあ、とにかく、そいつらはお前に預ける。基本的にお前の傍にいるだろうが、時折姿を消しても心配するな」
必ず戻ってくる。
そう言いながら「はぁ」と溜息を吐き落としたスクアーロは腰に錘を据えたような緩慢な動きでベッドから立ち上がって。
「もうすぐ食事の時間だ。行くぞ」
顎でクイっと扉を指し示した。
「あ。う、うん」
さっさと一人で行っちゃうんじゃなく、一緒に向かってくれる辺り、本当に放置プレイは撤回した、のかな。
「お前も、大概単純だな」
「?何か言った?」
「――いや?何も」
いつの間にか消えた涙。
泣いていた事実さえ忘れて。
目に見えるスクアーロの変化に頬を緩ませながら、俺はドアノブに手を掛ける彼の背を追って立ち上がったのだった。
「なーん」
「みゃーお」
軽やかな足取りで、俺に続く二匹と共に。